その男、極上につき、厳重警戒せよ
「Webセキュリティの解析を頼まれていると言っただろう? 君の会社は何者からかアタックの対象にされていて、俺たちはその対策を施している。アタッカーのターゲットは社長個人らしくてね。俺は仕事として、付け入られる可能性のあるものはすべて排除しなきゃいけない」
「はあ」
「それが君ってことだ」
顔がこわばってしまって、慌てて手で押さえるけれど、彼はしっかり私の挙動を観察している。まるで、獲物を狙った猛禽類のような目。リスの私が敵うわけない。その目に捕らわれて捕食されるのを待つのみだ。
だけど、少しばかりの抵抗は試みないと。
「それと、私が何の関係があるんですか」
「しらばっくれても無駄だ。じゃあ聞くが君の父親は?」
一見関係なさそうな質問が出されたことで、私は彼が全て知っているのだと理解する。
慎重に会話をはぐらかすのみだ。
「いません。私の母はシングルマザーでした」
「戸籍上はいなくても、生物学上の父親と言うのは必ず存在するもんだ」
「私は知りませんってば」
「知らないからのうのうとこの会社で受付してる……でいいのか」
「はい」
「嘘が下手だな。そこは突っ込むところだ。なにも知らないなら、疑問しか湧かないところだぞ」
してやったりという表情で深山さんが笑った。
逆に私は敗北感で首を垂れる。困ったな。嘘をつくのは案外難しい。
畳みかけるように深山さんは私にとどめを刺した。
「自分でもわかってるんだろ? 君と遠田社長が、他人と言うには似すぎているってこと」
私は、観念して口を開いた。