その男、極上につき、厳重警戒せよ

「随分高層ですね」

「間借りだ。同じ階に別の会社も入っている。あんなデカい自社ビル持ってる会社の社員に言われても嫌味にしか聞こえない」

「嫌味のつもりなんてありません」


言い合いながらエレベータを下り、区分けされた一角に向かうと、「あ、社長ー」と甲高い声が聞こえてきた。

ショートヘアのかわいい感じの人だ。
背が低くて、下手したら学生さんにも見える。満面の笑顔になんだかホッとしちゃう。だって深山さんいつも怖いんだもの。


「……かわいい」

「言っておくけど彼女二十七歳だから。君より年上」

「えっ!」

「で、彼女が新しい受付」

「ええっ」


ホッとしたのもつかの間、再び緊張してきた。

だって指導しろって言ったよね? 自分より年上の人に、そんなことできるわけないじゃない!
しかも中途なら経験者を採用しなよ。


「高井戸さん、君の先生を連れてきたよ」

「本当ですか。わー、よろしくお願いします」


しかもハードルを上げられてしまった。
高井戸さんと呼ばれたショートヘアの女性は、素直にキラキラした顔で私を見上げてくる。


「さ、咲坂静乃と申します」

「高井戸千晶です。よろしくお願いします。社長、ちゃんとみんなに紹介してくださいよ」

「ああ。今いるやつだけでいい。ちょっと集まれ」


深山さんの会社は少人数の会社らしい。
ざっと集まったのは二十人くらいの社員。男女比は3:1というところだろうか。
若々しい会社なのか、年配の人は少ない。

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