その男、極上につき、厳重警戒せよ


「前は営業事務なんです。でも私、電話応対とか苦手だしー。まあ一通り? せっかくだから遊び気分で。ね」


全然気取らない人なんだな、と思った。
少人数だからか、TOHTAとは全体的に雰囲気が違う。

「とりあえずは社内の説明を先にしますね」と高井戸さんが言い出し、私と彼女はふたりで会社内を回る。

そう広くもないオフィスだ。
区画を間借りしていると言ったけれど、受付スペースのすぐ後ろにデスクが島を作るように五列並べられている。

みんなノートパソコンに向かって仕事をしていて、場所の移動も結構気軽にやっているようだ。

奥に会議室と応接室、社長室と並び、やたらに空調が効いたコンピューター室には大型の機械が入っていた。


「うちは、セキュリティ管理が仕事だから、仕事内容に関してはみんな秘密主義になるんですよ。だから顔を合わせると逆に仕事じゃない話が多くなったりして、だらけた感じに見えるんですけど」

「そうなんですね」

「意外と有能な人材が多いと思います。中途で入って来て、ちょっと気後れしていたので、咲坂さんが来てくれてホッとしました」


童顔で自分より若く見えても、やっぱり年上の人だ。
気遣って私の緊張をほぐそうとしてくれているのが分かって、私はようやくホッと一息つくことができた。

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