その男、極上につき、厳重警戒せよ

「ほら」


視界が開けたと思ったと同時に、深山さんに背中を押される。
一歩踏み出した先には、遠田社長。面長の顔に優しそうな瞳。私の父だという人は、この人にどのくらい似ているのだろう。


「しゃ、社長。……教えてください。私の父は、どんな人だったんですか?」


母がいれば満足だとは思っていたけれど、知りたくない、なんてことはあるわけがない。
ただ、深く考えるのは怖かった。

大好きな母が愛人という立場に収まったことが信じたくなかったし、彼女が持つどす黒い部分を知るのが怖かった。
嫌な部分を見たくなくて、何年もうつむいたまま目を閉じていた。
思えば、なんて弱虫だったんだろう。

遠田社長は大きく息を吐き出した。


「攻……弟は、私とは違って、情熱的な男だったよ。……まあ座って話そうか」


遠田社長が応接ソファに腰かけたのを確認してから、深山さんに勧められ、私はその向かいの下座に腰かけた。


「君のお母さん……桐子さんとの出会いは見合いの席だ。彼女の父親は資産家でね。会社を大きくするために元手が欲しかった私の父は、伝手を頼って無理矢理、当時二十七歳の私とまだ二十歳の彼女との見合いをセッティングした」

「見合い?」

「取引先に彼女の父親の友人がいてね。彼は私を気に入ってくれていた。だから積極的に味方になってくれたんだ」


遠田社長は昔を懐かしむように遠くを見る。
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