その男、極上につき、厳重警戒せよ


 会社に戻り、部長たちの報告を受けた後、定時を過ぎて帰る社員たちを見送りがてら雑談をしていると、後ろから声をかけられた。


「おーい、深山。飯食いに行こうぜ」


我が株式会社【フェンス】の実質的ブレーンである桶川恭平だ。

二歳年下のこいつとは、四年前に知り合った。IT企業が集まるセミナーで、なんとなくひとりアウトローな雰囲気を醸し出していた。興味を持ってちょっとした疑問をぶつければ、恐ろしいほどの専門知識を、さも何でもないことのように言う。

隠れたお宝を見つけたような気がして、名刺交換をした後、何度か会う機会を持った。

当時、恭平が勤めていたのは、大手のIT企業だ。ヘッドハンティングは難しいかと思っていたが、恭平はあっさり食いついてきた。

『いいよ、深山さん、おもしろいし。俺、こんなだから上から嫌われてるんだよね』

まあ、およそ営業トークには向かないタイプではある。
加えて、大企業故に仕事は分業化されており、自分で携われる部分が一部というところも、恭平には合わなかったのだろう。

出会って半年後には、部長待遇で彼を迎えていた。
最初、難色を示した社員もいたが、彼の知識の豊富さは誰もが納得するところだったし、あの人懐っこい人柄は少数精鋭をモットーとするうちの会社には合っていた。

今ではなくてはならない存在である。

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