その男、極上につき、厳重警戒せよ
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パーティの間は、そつなく李衣菜さんをエスコートした。
同伴者としては当然の距離で、しかし踏み込み過ぎないように気を付けながら。
そして終了と同時に、彼女を副頭取にお返しする。
「深山さん、良かったら今度……」
「ありがとう。綺麗なお嬢さんとご一緒できて光栄でした」
彼女の誘いを途中で遮り、過去形で語ることで、二度はしないという意味を込める。
聡い彼女はそれだけで、理解するだろう。
李衣菜さんは傷ついたように笑うと、小首を傾げて俺を見上げた。
「私ではお気に召しませんでした?」
「いいえ。あなたは素敵なお嬢さんだ。……ですが、あなたを見ていて、思い出してしまったんです。不器用で、助けてやりたい女性のことを」
「恋人だったんですか?」
「まだ始まってもいません。これからです。振られる可能性だってある。でもこの気持ちがある以上、あなたを振り回すことはできません」
口元には笑みを浮かべたまま、李衣菜さんは眉を下げた。
「……いいな。深山さんにそんなこと言われるなんて。羨ましいです。……今日は楽しかったです。ありがとうございました」
「あなたに幸せが訪れることを願っております」
引き際も心得たものだ。若いのに立派なものだと思う。
所詮今日はビジネスの場だから、笑顔で別れてこれで終わりにできるだろう。
彼女を待つ時間は、俺が初めて立ち止まって自分を見つめ返した時間でもあった。
再確認した自分の気持ちは、今度こそ揺らがないような気がした。