その男、極上につき、厳重警戒せよ


 その後、俺は咲坂の足取りをたどろうと動き出した。
もう十分待った。ここからは、一緒に歩いていきたいんだと彼女に言いたくて。

遠田社長のもとを訪れ、連絡先を聞こうとしたが、『個人情報だから』と教えてはくれなかった。


「そこを何とか」

「君が何かをするとは思っていないよ。だけど、彼女が自分から教えていないのなら言えない」

「遠田社長!」

「あの子は他に頼るところのない子だ。勝手に住所や電話を教えられれば、恐怖心が湧くだろう。私だって会社というつながりが無くなった以上、もうあの子を守ることはできないんだ。就職先が決まったと報告があれば、君にも教えるから」

「……そうですか」


なんだかんだと、遠田社長は彼女のことを気にはかけているんだろう。そういう理由を掲げられれば、強気には出られなかった。


結局、俺はまだ待つしかないのか。

盛り上がった気持ちがまた冷やされる。こんなことを繰り返しながら、俺はどこまでいけるんだろう。

ただ俺には、もう二度と会えないだろうという絶望はなかった。
何故だろう。勘みたいなもんだ。

いつか必ず会える、だからこそ、俺は俺で自分を磨きながら待つしかない。



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