その男、極上につき、厳重警戒せよ
*
そしてそれから二週間後、客先から出たとたんに、恭平からの電話が鳴る。
「はい。なんだよ、恭平。今日は会社に戻らない予定なんだが」
『夜って空いてるんだろ? 今すぐ【ミヤマ】に来てよ』
「は? なんでだよ」
『タクシーその辺走ってない?』
顔を上げてあたりを見回す。ビジネス街であるここはタクシーの需要はあるため、結構な頻度で走っている。
「走っているが」
『停めて乗ってよ』
なんとなく言われるがままタクシーを止め、【ミヤマ】まで行ってもらう。
そう遠くもないので、乗っていた時間は五分くらいだ。その間、恭平は延々と今日の仕事先でのトラブルを説明し始める。それと【ミヤマ】に向かうことの関連性が全く分からない。
「その話、着いてからじゃダメなのか」
『まあいいから聞けって』
「お客さん、着きましたよ」
電話をしたまま支払いを済ませ、下り立ったところで『俺の名前で予約してるから入ってこいよ』と告げられる。
さっきから訳が分からない。そのまま会話しながら、暖簾をくぐった。
「もういい、着いたから切るぞ。……すまない、桶川の名で予約を……」
いつものように、仲居が深々と礼をして迎えてくれた。そして、彼女が顔を上げたとき、俺は心臓が止まるかと思った。
ミヤマの仲居がそろって着る鮫小紋の茶衣着。あげた顔は、俺が会いたくてたまらなかった彼女だ。
そしてそれから二週間後、客先から出たとたんに、恭平からの電話が鳴る。
「はい。なんだよ、恭平。今日は会社に戻らない予定なんだが」
『夜って空いてるんだろ? 今すぐ【ミヤマ】に来てよ』
「は? なんでだよ」
『タクシーその辺走ってない?』
顔を上げてあたりを見回す。ビジネス街であるここはタクシーの需要はあるため、結構な頻度で走っている。
「走っているが」
『停めて乗ってよ』
なんとなく言われるがままタクシーを止め、【ミヤマ】まで行ってもらう。
そう遠くもないので、乗っていた時間は五分くらいだ。その間、恭平は延々と今日の仕事先でのトラブルを説明し始める。それと【ミヤマ】に向かうことの関連性が全く分からない。
「その話、着いてからじゃダメなのか」
『まあいいから聞けって』
「お客さん、着きましたよ」
電話をしたまま支払いを済ませ、下り立ったところで『俺の名前で予約してるから入ってこいよ』と告げられる。
さっきから訳が分からない。そのまま会話しながら、暖簾をくぐった。
「もういい、着いたから切るぞ。……すまない、桶川の名で予約を……」
いつものように、仲居が深々と礼をして迎えてくれた。そして、彼女が顔を上げたとき、俺は心臓が止まるかと思った。
ミヤマの仲居がそろって着る鮫小紋の茶衣着。あげた顔は、俺が会いたくてたまらなかった彼女だ。