その男、極上につき、厳重警戒せよ
「は? え? なんで?」
あまりにもパニックになっていて、自分でも何を言っているのか分からない。
なんで彼女がここに。しかもその服を着て。
きょろきょろあたりを見回しても、ミヤマは夜の回が始まったばかりで、まだ客はそんなに入っていない。
もちろん奥に行けば他にも仲居はいるはずだが、今はここにいるのは、俺と彼女、ふたりきりだ。
上がる心拍数。喉が締め付けられるような感覚に、抱えてきた気持ちがうまく言葉になってくれない。
ただじっと彼女を見つめて、ようやく出せたのは、驚くほど腑抜けたような声だ。
「……なんだよ」
俺の視線を受け止めていた彼女は、最初戸惑っていたようだが、唾を一度飲み込んでようやくひと言発した。
「いらっ……しゃいませ」
仲居らしい控えめな笑顔を見せ、もう一度頭を下げる。
「ここに勤めたのか? 聞いてないぞ?」
「今日から正式採用です。深山様、ご予約はございますか? お部屋にご案内いたします」
「ああ。桶川の名で……ああもう、あいつもグルか」
やってくれたな、あの野郎。
てことは、あいつは咲坂の連絡先を知っていたのか?
だったら教えろよ。
知っているだなんて思わないから、聞いてみたこともなかった。
なんだよ、灯台下暗しってやつじゃないか。