その男、極上につき、厳重警戒せよ


その後、恭平は高井戸さんを連れてやって来て、俺たちは料理に舌鼓を打つ。
高井戸さんは咲坂との再会に素直にはしゃぎ、恭平はニヤニヤとやたらに俺に視線を送ってくる。

アルコールなしで食事を終え、閉店時間間際にもう一度彼女を迎えにくる。
手には赤い薔薇。

さんざん悩んで認めた恋心を、あきらめる選択肢は俺にはない。
どんなことをしても振り向かせて見せる。


「やっと出てきたな」


裏口の従業員入り口の前で、出てきた彼女を捕まえる。


「待っててくれたんですか?」

「ずっとじゃない。時間を合わせてきただけだ」


そっけなく言ったら、なぜか彼女は笑った。


「なんだよ」

「いえ。初めて会ったときもおんなじ風に言ってたなって思って」


そういえばそうだったかもしれない。
まるで拉致するように彼女を連れ出したあの日がひどく懐かしく感じる。


「だが、待っていたのは本当だ。ほら」


赤い薔薇を差し出せば、「私に?」と驚いたように言う。


「やっと見つけたんだ。遠慮せず口説かせてもらう」

「深山さん、あの」

「あの時君は、今じゃないって言ったな。……じゃあ、今度はどう? そろそろ俺と付き合ってもいいって思わない?」

彼女は明らかに戸惑っていたが、花束をぎゅっと抱きかかえると、深呼吸をした。
そして今度はまっすぐに俺を見返した。

「グイグイ来ますね」


少し強気の、いい顔だった。俺は満足して、その唇を奪い取りたい欲望を押さえながら彼女の肩を抱く。

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