【短編】不機嫌な最下くん






あれ…。


化学の授業がおわり、ぞろぞろとみんなが実験教室から出ていくなか、ただ1人だけがまだ机の上に突っ伏していた。



「最下くん、授業終わったよ」


「……」


「最下くん」


私は、ビクともしない彼に歩み寄って、もう一度彼の名前を呼ぶ。


フワッと柔軟剤のいい匂いがして、

あ、最下くんの匂いだ

なんて心の中でつぶやく。


どうして、前みたいに話してくれなくなっちゃったんだろう。


思い当たることと言えば、一応男の子である彼に「可愛い」と連呼したこと。


だけど、それはクラスの女子全員が言ってることで、最下くんだってそう言われて嫌そうではない。


ほかに、何かあったかな…。


丸くなった彼の背中を見つめながらジッと考える。


< 4 / 12 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop