その男
「ほら、だから今日の陽子さんはそんな感じだと言ったよね」
ふいに賢一に声をかけられ、頬杖を解く。
「なによ、そんな感じって」
「寂しそうってことだよ」
賢一は時々すっと陽子の心の奥まで手を差し込んでくる。
陽子は湧き上がってくる想いを押し殺そうとする。
でもその声は陽子の躯の奥から手を伸ばし陽子を捕まえようとする。
『綺麗になったわたしを見て、わたしをもっと見て、消えてしまわないようにわたしを見て』
絞り出すように声を出す。
「べつに寂しくなんてないわよ」
残ったカクテルを一気に飲み干す。