その男


「篠崎さんとだったらできそうな気がします」

 雨の窓越しに目が合うと片桐は美穂に微笑みかける。

 男らしい鋭い一重瞼だがよく見ると奥二重で、笑うときれいな二重線がくっきり見え少年の顔になる。

 すました美人が笑うとえくぼができるとか、八重歯が見えてそのギャップが可愛いとかと同じ部類のそれを片桐は持っている。


 このギャップにときめきを覚えてはや半年。

 美穂と片桐はただの同期の仕事仲間でしかなかった。

 海外の美容機器を専門に取り扱う商社に勤める二人の会社は男女一組で営業に回る。

 そのせいか社内恋愛率はかなり高く会社もそれを禁止していなかった。




< 6 / 51 >

この作品をシェア

pagetop