その男


「ぼく篠崎さんと組めてほんとうにラッキーです」

 最初はいちいち片桐の言葉の裏を読み、勝手に深読みしたり誤解したりして一喜一憂したが、最近はもうそんなことはしない。

 片桐は美穂を仕事仲間として尊敬はしているが女として見ていない。

 それがはっきり分かったからだ。

 でもそれは逆に美穂の片桐への想いを増々強くさせた。


 窓に映る美穂はお洒落とは程遠い眼鏡をかけ、洗いさらしの髪を黒ゴムで一つに束ねただけ。



 お洒落は嫌いだった。

 男に媚びているようで、女の性を強調するようで嫌だった。

 子どもの頃からそうだった。

 周りの女の子たちがお洒落に興味を示しだしても、美穂は勉強の方が面白く成績も優秀だった。

 社会人となった今は周りからの仕事の評価も高い。

< 7 / 51 >

この作品をシェア

pagetop