好きって言ってほしいのは、嘘つきな君だった。
見れば、大志が藤田さんの手を捻りあげていた。
余程痛いのか、藤田さんの顔が歪んでいる。
「何、いい大人が恥ずかしくないわけ?よくも舞を泣かせてくれたな?」
ギリギリと力が込められているであろう力。
初めて聞く大志の低い声に、私ですら少し怯えてしまった。
「違…っ、僕は別に…」
「あ?」
周りのお客さんも、同じホールの子も、全員の視線が集まる。
それもあってか、藤田さんは焦ったように「違う」と言い張った。