ホットジェル
「……塗るだけですよね」
「期待してんの?」
「ーーっしてるわけないでしょう」
「秋月さんに下心がないなら来れるだろ?」
下心がその時、なかったとしても。
導火線には簡単に火がつくことくらい枯れた私でも知ってた。
見透かした目でこっちを見てくる宮下さんが憎い。
だから、キスも、それ以上も全部自己責任だった。
熱さにかまけた、私のーーーー。
秋月さんがいつもふらふらになりながら、帰宅している様子をよく目撃していた。起床は早く夜は遅い。モンスターエナジーをこれでもかってくらい袋にびっしり詰めているのをスーパーで目撃した時は引いた。
彼氏が彼女の家に出入りしていた時はそんなこともなかった。逆に、こんな疲労困難みたいな状態になったのはパッタリ彼氏が来なくなってからだと気付いた。
なんともまぁ不器用な女である。いつか死ぬんじゃないかって思ってる矢先、彼女はあんまりにも無防備な姿でベランダにいた。
キャミソールを押し上げている乳首であるとか、肌の白さとか、じっとり汗をかいて湿った毛先であるとか、もともとのアンニュイな姿は確かに色っぽかった。
彼女は俺が男であることを知らないように接した。だから直接的な言葉で誘って、揶揄った。
部屋に来た秋月さんはやっぱりかわいそうなくらいに男に不慣れのようだった。声をかけても挙動不審。
ソファーに先に座って秋月さんを呼んだ。
「秋月さん、ほら塗る約束だろう」
ぱんぱん、とソファーを叩く。