イジワル男子の甘い声





「はーい、先週のテスト返すぞー」


テストが終わって、週が明け。


緊張の瞬間。


スカートの襞を両手でギュッと握りしめながら、名前を呼ばれるのを待つ。


っていうか…なんで柏場いないんだよ!


斜め後ろを振り返って、ぽかんと空いてる席を見る。


朝のHRで、私用がある、とだけ担任が言ってたな。


結果楽しみだ、とか言ってたくせに。


いや、違う。今は柏場よりもこっちだ。


教卓まで答案用紙をもらいに行くみんなはそれぞそれ、あーっと重い声を出したり、よっしゃとガッツポーズをする。


私はどっちになるのだろうか。



「今井 双葉」


っ!!


「は、はいっ」


頭の中でグルグルと考えていると、あっという間に自分の番が来て名前を呼ばれた。


ガチガチになった身体をロボットのように動かしてから、教卓まで歩く。



最初の教科。



これがダメだったら全部パァだ。



「今井…もう少しだったな」


へ?


答案用紙をもらう寸前で、目の前の現代文の先生がそういった。


なにそれ…もう少しって…。


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