イジワル男子の甘い声
*
「はーい、先週のテスト返すぞー」
テストが終わって、週が明け。
緊張の瞬間。
スカートの襞を両手でギュッと握りしめながら、名前を呼ばれるのを待つ。
っていうか…なんで柏場いないんだよ!
斜め後ろを振り返って、ぽかんと空いてる席を見る。
朝のHRで、私用がある、とだけ担任が言ってたな。
結果楽しみだ、とか言ってたくせに。
いや、違う。今は柏場よりもこっちだ。
教卓まで答案用紙をもらいに行くみんなはそれぞそれ、あーっと重い声を出したり、よっしゃとガッツポーズをする。
私はどっちになるのだろうか。
「今井 双葉」
っ!!
「は、はいっ」
頭の中でグルグルと考えていると、あっという間に自分の番が来て名前を呼ばれた。
ガチガチになった身体をロボットのように動かしてから、教卓まで歩く。
最初の教科。
これがダメだったら全部パァだ。
「今井…もう少しだったな」
へ?
答案用紙をもらう寸前で、目の前の現代文の先生がそういった。
なにそれ…もう少しって…。