イジワル男子の甘い声
*
*
ピンポーン
用事だっていってたからいるかわかんないけれど。
猛ダッシュで学校から出て、彼の家のインターホンを押した。
「……」
出ない。
やっぱりいないのかな。
一番伝えたかったのに。
たくさん見てもらってたくさん迷惑をかけた。柏場のやってくれたことがちゃんと報われた、そういち早く伝えたかったのに。
肩を落として、隣の自分のうちへ戻ろうと踵をあげた瞬間。
「入って」
そんな声が、インターホンから聞こえた。
『入って』
それは、うちに入ってもいいということなんだろうか。
ブチッとすぐに切れたインターホンにもう一度質問することはできなくて、私はゆっくりドアノブに手をかける。