イジワル男子の甘い声
「はー?舌打ちー?可愛くないなぁ」
「ほら。俺の顔ならもう見ただろ。さっさと帰れ」
そう言って、やつの背中を押した瞬間だった。
「…あの子がsakuのこと好きなの知ってるの?」
さっきまでバカみたいにチャラけた声を出していたのに。
落ち着いた声のトーンでそういうノアは、普段の彼よりも苦手だ。
「…帰れよ」
「あの子は、優作が今まで相手してきた女の子たちとは違うから、簡単に部屋になんかあげて食べちゃうようなこと、しないでよ?」
「……っ、」
「じゃあ、新曲も楽しみにしてるから」
ノアは俺の顎に指で軽く触れると、そう言ってマンションを後にした。
ノアは多分、俺が今、あいつを部屋に上げていることを知っていた。
俺のことを唯一なんでも見透かすようなノアが、やっぱり苦手で、嫌いだ。