イジワル男子の甘い声


早くこの状況、なんとかしなくては。


でも、もじもじと身体を動かして柏場を起こしちゃったり、はたまた嫌な気持ちにさせたらそれこそ何されるかわかんない。


私に興味のない柏場といえど、酔っ払ってるときはどうかわからない。


部屋だった薄暗いし。


大丈夫だ、って言ってたノアのことなんて今のこの状況からしてあてにならない。


「…はぁ」


私がこんな近くでため息をついていることなんて、今の柏場には全然わかんないんだろう。


だけど、不思議と、



離して欲しくないかも、なんて思ってる自分もどこかにいて。


パパが知らない誰かのところへ行ったみたいに、私も寂しいのだろうか。


こんなやつに抱きしめられるだけで、あったかい、なんて思ってるとは、ちょろい女だ。


柏場は…会いたい人とか、いないのかな。


ふとそう思った時──────。


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