イジワル男子の甘い声
「…め…ん」
「へ?」
隣から声がして、顔を上げる。
今、柏場がしゃべった?起きたのかな?
そう思って顔を見るけど、起きてはないないみたい。
なんだ、寝言か?
人のこと急に抱きしめるは寝言はいうは、酔った柏場は悲惨だな。
酔いが覚めたら、怒ってやろう。
いつも何かと私の方が怒られてばかりだから。
「ごめん…」
うわ、あの柏場が謝ってるよ。
一体どんな夢を見てるのか。
「んっ、…ごめん…な、瑞紀(みずき)」
っ?!
…えっ、
…ミズキ…?…誰?
柏場の口から初めて聞いた、女の人の名前。
誰…。
『過去に女で嫌な思いしてるんだよ。だから、基本的に女の子のこと信用してなくてさ』
この間ノアが言ってたことが頭を過る。
もしかして、柏場の元カノ、とか?
わかんない。
全然わかんないけど、なんだろう。
この、胸がすごくモヤモヤする感じ。
すごく、嫌だ──────。