イジワル男子の甘い声
「誰のためにやってんだよ、それ。そんなことしなきゃ振り向かないようなやつならやめたほうがいい。無意味だ。何やったって大して変わってねーよ」
変わってないのに、そこまで怒られる意味がわかんないよ。私は…私は…。
「…なんで怒られてるのか、全然わかんないよ」
「っ、わ、わりぃ」
初めて、柏場が私に謝った。
私がつぶやくと、柏場はゆっくりと少しだけ私から離れた。
「どんなに練習しても、歌詞読み込んでも…いまいち心に響いてこなくて」
「……」
「人が大切にしてる曲は大切に歌う、それだけだったから」
「うん」
「けど…」
柏場の長い睫毛が、今日はよく動く。
「自分でもよくわかんねぇよ。だけど、お前に向けて歌ってみたら何かわかるんじゃないかって思った。そしたら…」