イジワル男子の甘い声





「あ!双葉!」


翌朝、パパとマンションのエントランスを出た時、なにか思い出したようにパパが私の名前を呼んだ。


「ん?」


「今日、パパ取引先に挨拶に行かないといけなくて、ちょっと遠いんだ。そこでの視察もあって、今日は帰れそうにない。向こうのホテルにそのまま泊まると思うけど、1人で大丈夫だよな?」


「えっ、」


「もう、高校生だもんな」


そんな…。


────ポンッ


っ?!


俯いた私の肩に優しく手を置いたパパの顔は、まるで『これも双葉のためにやってる仕事なんだ』とでも言いたそう。


わかってる。


パパは私のために頑張ってくれて、不自由な思いをしないでほしい、快適に過ごしてほしいと思って、今みたいな良いマンションにだって住んでいる。


「うんっ、大丈夫」


私がそうやって笑顔を向けると、パパは「頼もしいぞ」と言って、私の頭をクシャっと撫でた。



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