【番外編】狼社長の溺愛から逃げられません!
 


「……じゃ、お利口に家に帰って寝ろよ」

そう言って電話を切る。

きっと今頃有川は、涙目で顔を真っ赤にしてスマホを握りしめてるんだろうな。

名前を呼ぶだけで飛び跳ねるあの華奢な肩。振り返ってこちらを見て、うれしくてたまらないという表情で駆け寄ってくる有川の姿を思い出して、思わず頬が緩んだ。

今日もフィルムマーケットの試写会へ向かうために、シャワーを浴び支度をする。
いつまでもダラダラと厳しい残暑が続く東京とは違い、カナダの夏は短い。九月のトロントはもう秋が訪れ街路樹が色づき始めていた。

街の中は国際映画祭のため、俳優や映画関係者、マスコミに観客。世界中から何十万人という人が詰めかけ盛り上がっている。
ジャケットを羽織り試写会の会場へ向かおうとしていると、後ろから腕をとられた。

「耀」

そう声をかけられ足を止める。
俺のことを下の名前で呼ぶ奴はほとんどいない。

振り向くと、黒髪のロングヘアの女がこちらを見て笑っていた。


 
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