【番外編】狼社長の溺愛から逃げられません!
「紗英か」
俺の腕に抱きつくようにしがみついた篠原紗英を見て小さく息を吐く。
以前勤めていた配給会社の同僚で、今はアメリカで映画のプロデューサーをしていた。
手足が長くスタイルのよさが際立つようなシンプルなドレスを身にまとった彼女に、近くにいたマスコミが気づき近づいてくる。
カメラがこちらに向いているのもお構いなしで、紗英は俺に体を寄せて顔をのぞきこむ。
「なんか今日はごきげんじゃない?」
「そうか?」
「耀、いつも寝不足だと不機嫌なのに」
「だれのせいで寝不足だと思ってるんだよ」
昨日は昔なじみの紗英に連れまわされ、朝方まで映画関係者のパーティーに顔を出していた。
今日も朝からスケジュールがびっしりだというのに、勘弁してくれと顔をしかめる。
「私のせいで寝不足なんて、そんな言い方したら勘違いされそうね」
「なに言ってんだよ」
俺が思い切りいやそうな顔をすると、紗英が楽し気に肩を揺らして笑った。
その様子を、マスコミのカメラが何枚も写真を撮る。
普段日本にいるときもわりとカメラで写真を撮られることが多かったが、トロントにいると映画祭の期間中はつねにどこかにマスコミがいて、感覚がおかしくなる。
写真を撮られているという意識が薄くなる。