たったひとつの愛を君に



どうしよう。子供が出来たら。



男は早々に服を着ると私をそのままに

家から出て行ったようだ。



どうしていいか分からなかった。

目隠しも口封じも、手足も縛られたまま。

ひたすら涙を流すだけだった。



誰かに助けて欲しいと思う反面、

こんな自分を見られたくない気持ちもあった。

こんなときに母が帰って来たらどうしよう。

母にはこんな姿を見られたくなかった。





その時の私は忘れていた。

蜂がうちに来ることを。


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