淫雨
三崎さんには親がいない。自分は捨て子で施設で育てられ施設のみんなは兄弟だと、だから兄弟が多い。


施設での生活はけして恵まれているものでも楽しいものでもなかったらしい。


家柄を気にする『ゆいしょただしき』らしいウチの両親は三崎さんの生い立ちを快く思っておらず、結婚を当初反対していた。最終的に賛成したわけではないが『ある』条件を出した。


死後離婚ではないけど。


何年何十年先かはわからないが、娘やきみにもしもの事があったら直ちに離婚してもらう。どこの馬の骨かわからない人間のところではなく娘には八重樫の墓に入ってもらう。



二人は結婚届けと同時に離婚届けも書いた。


結果、出す機会はとんでもなく早くおとずれたのだ。


病床の虹花は、離婚したくないと、出しにいかないでと叫び泣いていた。八重樫には戻りたくない――


しかし、三崎さんはこれが結婚を許してもらう条件だったからと離婚届けをあっさり提出してしまった。


わたしたちはまた他人になった。


間もなくして虹花は亡くなった。


虹花は果たして八重樫のお墓に眠っているのだろうか? 魂だけはいつまでも三崎さんの側にいるのではないか。


そう、いつまでも。





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