星空を見上げて

「絵里さん?」

「ウチは家族経営の会社だから両親にとって1番大事なのは会社でね
家にいても会話は会社のことばかり家族団欒って言葉は我が家にはなかったのよ

私たち姉弟のことはお手伝いさんにまかせっきりだったけど
1人っ子じゃなかったことは親に感謝したわ、1人だったら多分グレてたと思う
私たちが3人姉弟っていうのは知ってる?」

「はい圭介さんに聞きました」

「私たち姉弟はとても仲がよくてね
特に下の弟、洋介っていうんだけど洋介とはよく一緒に遊んだわ

でも圭介はどんなに誘ってもいつも1人でいた
間近であの両親を見ていたせいか小さい頃から妙に冷めててね
姉の私がいうのも何だけど可愛げのない弟だった

中学・高校・大学と進んで
それなりに彼女もできたみたいだけど全然楽しそうじゃなかった
付き合ってもすぐに別れてを繰り返してたっけ
逆に社会に出ると今度は仕事ばかり、心配せずにはいられなかったわ」

圭介さん・・

「そんな圭介が瞳ちゃんには興味をもった
貴方を見るあの子の目はとても優しかった、あんな圭介初めて見たわ

瞳ちゃん自信を持って圭介は貴方のことをただの同居人だなんて思っていない
それは瞳ちゃんも気がついてるんじゃない?
圭介の言葉に嘘はひとつもない
ずっと一緒に暮らしていた貴方なら分るでしょう?」

「・・」

それ以上の会話はなく
すっかり冷めてしまったコーヒーを飲み終えるとお店を出た


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