aventure
鴻は桜智と長い時間そうしていた。

桜智は鴻がゆっくりと時間をかけて愛してくれる事に幸せを感じた。

「鴻さん、時間は大丈夫?」

さすがに夜も更けて来て桜智は鴻が帰らなくていいのか心配になった。

「今夜は泊まって行ってもいいかな?」

鴻がこの部屋に泊まるのは初めてで
桜智は嬉しそうに笑って頷いた。

鴻はその日波瑠の顔を見たくなくて帰らなかった。

自分が若い女に入れあげてると知られたのも恥ずかしかったが
平然と自分の知らないところで
桜智を寝取った波瑠が怖かったのだ。

何にも知らずに鴻に甘えている桜智を見ると申し訳ない気持ちになった。

波瑠は鴻が帰ってこない事に苛立っていた。

今頃、桜智を抱いてると思うと気が狂いそうだ。

それが父に対しての怒りなのか
桜智に対する嫉妬なのか波瑠自身ももうわからなかった。

桜智との夜を思い出して波瑠は自分を慰めた。

桜智が欲しくて堪らなかった。

波瑠は思い切って桜智に電話をかけてみる。

その電話を鴻が気付いて桜智の前で切った。

「桜智、電話にも出ないで。」

「うん。」

桜智は波瑠に申し訳ないと思いながら
素直に鴻に従った。

鴻は桜智にご褒美を与えるようにキスをした。

波瑠は電話を切られてますます腹が立って仕方がない。

思い切り壁に電話を投げつけて
桜智のマンションの前まで車を走らせた。

桜智の名前を叫びたかった。

桜智を純粋に欲しいと思った。

そんな自分に気がついて波瑠は途方に暮れた。
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