aventure
狂気
鴻は波瑠との約束を守れずに桜智に会わずにいられなくなる。

桜智が可愛くて仕方がない。

桜智に頻繁逢いに行き、
波瑠を心配させないように遅くならないうちに必ず家に帰った。

波瑠は波瑠で父とは会わないように
朝から昼にかけて桜智のマンションの前で桜智が出て来くるのを待った。

一目でも逢いたいと思っただけだが、
自分のしてることはまるでストーカーだと波瑠は思う。

桜智は見るたびに艶っぽくなる。

そんな日が続いて、とうとう波瑠は我慢できずに桜智に声をかけた。

「桜智…」

桜智は波瑠を見て逃げ出した。

波瑠が追いかけて桜智の腕を掴んで引き寄せた。

「ごめんなさい。」

桜智から出た言葉はそれだった。

「謝るのは俺の方だろ?

桜智には酷いことしたから。」

桜智は波瑠の手を解きながら

「私たち、もう逢わない方がいいと思います。

鴻さん…いえ波瑠さんのお父さんとも
逢わないから許して下さい。」

桜智は波瑠にウソをつくしかなかった。

鴻と付き合ううちに鴻への愛を守るために
嘘が必要な時もあると気付いたのだ。

純粋だった桜智は周りに少しずつ変えられていく。

桜智はそれが大人になると言うことだと受け入れた。

「桜智…親父と逢わないなら俺と逢ってよ。」

桜智はすこしビックリした。

波瑠の復讐は桜智を騙して身体を奪ったところで終わりだと思っていた。

「許せないのはわかります。

でも…これ以上どうしたらいいか…」

「まだ親父の援助受けてるんだろ?」

「すいません。ちゃんとバイト見つけてお父さんには少しずつ返します。」

「それはいいよ。桜智は身体で払ったんだから。

今はただ貰ってるだけかもしれないけど…
俺と逢ってくれたら返せなんて言わない。」

自分の言うことは支離滅裂で
情けないと思ってるが
どんな卑劣な手段だとしても
桜智に会わずにはいられなかった。

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