aventure
波瑠は桜智をマンションに連れて行った。

鴻が与えたマンションは思ったより広くて
父親が桜智を抱くベッドを見ると胸が痛んだ。

「桜智…親父とはどうするつもり?」

「先輩、私は…私のことはもう忘れてください。

私は鴻さんが好きなの。

先輩と複雑な関係になったらここに居られなくなる。

お願いします。

もうこれ以上…」

波瑠は桜智の口をキスで塞いだ。

桜智は波瑠から離れようと必死だった。

「桜智…俺はお前を諦められない。

親父とは金だけにして。」

「そんなの無理だよ。
何言ってるの?

私は鴻さんのことを愛してる。」

「違うよ。桜智は生活のために金が必要なだけだ。

親父が大事だと思うのは金があるからだよ。

金が無かったら親父じゃなく俺を選んだ筈だから。」

波瑠はそう信じたかった。

「先輩のことは…好きじゃないです。」

桜智はそんな波瑠を突き放そうとするが
波瑠は諦めることなど出来ない。

桜智は確かに自分に惹かれてると思ったからだ。

自分に身体を任せたあの日、桜智は絶対に自分を愛してた。

「だったらどうして俺と寝たの?」

「あれは先輩が…」

「本気で嫌がったら最後まで行かなかった。

桜智は自分から俺を求めてた。」

桜智は波瑠を睨んだ。

自分が愛してるのは鴻なのだ。
鴻じゃなくてはならない。

桜智はそれを信じてる。

「違います!

そんなこと…」

「忘れたの?桜智はオレが欲しいって言った。」

桜智はまっすぐに波瑠に見つめられてどうしていいかわからなくなった。

「違います。

私は鴻さんを…」

桜智は泣いて言葉にならなくなった。

どうしていいかわからなくて波瑠が怖かった。

抱きしめられるとまた心が傾いてしまいそうで
必死で自分をを抑えていた。


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