aventure
桜智は相変わらずフローズンダイキリを飲んでいた。

鴻はそれを見て出逢った頃を思い出した。

「桜智…すまなかった。
あの時、君にあんな提案をしてすまなかったね。」

桜智はそれでもあの時、鴻が居なければ自分はもっと酷い道を歩いていたと思った。

「私もごめんなさい。
あの時、鴻さんを愛して申し訳ありませんでした。」

お互い間違っていた。

今ならそう思える。

「私、ちゃんと生きていきますね。

鴻さんを愛したことは間違いだったけど…
出逢えた事には感謝してます。」

桜智はあの頃よりずっと強くなっていた。

「さよなら。

元気で。何か困ったことがあったら…」

そう言いかけた時、桜智がその言葉を遮った。

「鴻さん、私は大丈夫です。

お金は毎月少しずつでも振り込みます。

一生かけて返します。

じゃないと…ずっと後悔するから。」

桜智は鴻との関係を綺麗な初恋にしたかった。

そして桜智は席を立った。

鴻はその後ろ姿をただ黙って見ていた。

そして小さく声をかけた。

「幸せに…」

その声は桜智には届かないけれど
鴻は清々しい気持ちで桜智を見送った。

そして桜智はその扉を開けて堂々と胸を張って歩き始めた。







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