コガレル ~恋する遺伝子~


 それでも流石に悲壮感漂うあの部屋には居たくなかった。
 今は公園のベンチに腰かけてる。
 
 部屋の窓を開けると見える高台の公園。
 何年もこの街に住んでたのに、ここに足を踏み入れたのは初めて。

 もうとっくに陽は沈んで、広い公園のどこからも子供達の声は聞こえない。

 疲れた…
 ふと上げた視線の先に、灯りに照らされた建物が見えた。
 高台のこの公園よりさらに上。
 街を見下ろすように建ってる洋館。
 ずっと気になってた建物だ。

 夜が全貌を隠した。
 街灯に照らされた部分だけが、公園の樹木の上に見えた。

 それはまるで浮いているようで幻想的だった。
 気付いたらフラフラと歩き始めてた。
 建物の正体を暴きたい。
 
 公園の一角の階段を登って道路へ出た。
 さらにその坂になった道をしばらく登ったら、洋館へとたどり着いた。

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