コガレル ~恋する遺伝子~
とどのつまり…住まいも職も失った。
この家は私の転居先が決まり次第、壊すことになった。
濡れた物を拭いたり、乾かしたり、処分して午後を費やした。
剥がれた屋根には養生シートが被せてあって、今は何とか住むことはできる。
致命的なのは電気が点かないこと。
どこかで漏電の可能性もあるらしく、ブレーカーを決して上げてはいけないと言われてる。
大家さん曰く、壊す家にお金をかけて修繕するのはナンセンスらしい。
でも…老夫婦を責めるつもりはなかった。
仕事を辞めたならちょうど良い、一緒に千葉へと本気で誘われた。
結婚云々は冗談だよ、と笑い飛ばして。
普段から二人が仲睦まじく庭を手入れしたり、並んで買い物から帰ってくる姿を見かけてた。
理想的な、可愛らしいおじいちゃんとおばあちゃん。
引越しやダメになった家財道具の金銭的な保証はしてくれると言うし、それ以上の面倒はかけたくなかった。