コガレル ~恋する遺伝子~
「じゃ、一緒に帰ろうよ?」

 弥生は頷かない。
 分かってる。
 東京で弥生を突き放した俺への罰だ。

 時間だ。
 立ち上がると弥生が手を離そうとするのを、強く握ってさせなかった。
 俺が離したくなかった。

「冬休みにお屋敷に泊まりに行ってもいいですか?」
「ハァ? なんで? 俺のマンションでいいじゃん」

 歩いて移動しながら楽しい話題を探すのに、俺に休みはない。
 次に会えるのは冬休みなのかと改めて思い知らされる。
 しかも二人きりじゃないのか、とさらに焦る。


「あそこが、好きなんです」

 短い間だったのに、あの家の中に弥生がいる光景が自然と頭に浮かぶ。
 そうだ、あの頃は家に帰るのが密かに楽しみだった。

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