コガレル ~恋する遺伝子~
「新しい彼氏かい?」
「へ?」
変な声を上げてしまったのは私。
背の低いご主人は、圭さんを見上げて聞いた。
聞いたのは大家さんなのに、なぜか私を睨む圭さん。
何?この三角関係…
「もお、大家さん、冗談は止めて下さいよ」
「ハハハ、お兄さん、冗談だよ!
弥生ちゃん可愛いのに男っ気ないからさ、婆さんが心配してたくらいだよ」
大家さんが「安心しなさいよ」って言いながら、圭さんの肩をポンポン叩いてる。
彼の不機嫌スイッチがどこにあるのか分からない私は、それをハラハラしながら見てた。
でも圭さんは特に気にしてる様子も見せないで、
「行くぞ、」って二階を指差した。
大家さんに軽く一礼すると、階段を登って行く。
私も一礼して後に続くと後ろで
「どっかで見たことあるなー」って、大家さんが呟いてた。
洋館はそう遠くないし、街のどこかで会ってたのかも、くらいで私の思考は部屋の鍵を開ける事にシフトした。
早く開けないと
「スイッチが…」
うっかり漏れ出した独り言に、ドアの前で佇む圭さんは怪訝な表情を浮かべた。