コガレル ~恋する遺伝子~
【ようこそゲストルームへ】side K


 手当ての最中、なんで倒れたのかと聞いたら、どうやらと言うか案の定、車の光が要因だったようだ。
 食べてない、寝てない、とも言ってたけど、最終的には光のせいで気が遠くなったって。


「悪かったな」

 もう無闇に人にライトを浴びせるのは止めにしよう、心に誓った。

 それなのに俺の声は届かなかったみたいで聞き返された。
 二度も謝罪するか、そんなガキみたいなことを思って口を閉ざした。

 しばらく無言が続いた後、先に口を開いたのは葉山さん。
 俺に看護師かと聞いた。
 やっぱり俺が誰かを分かってないらしい。

 手当てが慣れてるって言うけど、救急箱を開けたのは久しぶりだ。
 流石に准も落ち着いて、けんかの傷を作ることはなくなったから。

 消毒液が乾いたら、少し大きめの絆創膏を数枚貼って終わり。
 救急箱を片付けた。
 その隙に葉山さんはバッグを手に立ち上がると、すっと後ろに下がった。
 分かりやすく、俺から距離を開いた。

 誰も奪い取らないって。

 なんか手当ての礼も言われたけど。
 その足には絆創膏からはみ出て見える痣と、まるで意味を持たなくなったビリビリのストッキング。

 痛々しくもあり、卑猥な感じもする。
 お願いだから早く脱いで 捨てて、何度そう思ったことか。


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