極上スイートオフィス 御曹司の独占愛

車が走り出して、少ししてからだろうか。


「三年前のことだけど」


最初は、今日の仕事でのことだとか当たり障りない会話を交わしていただけだったのだが、急に朝比奈さんが昔の話を切り出した。


唐突にも感じる切り出しだけれど、私たちにとって仕事の話よりはまずこれが本題であることには違いなかった。


「ちょっと確かめたいことができたから。説明するのはもう少しだけ待ってくれるかな」

「確かめたいこと?」


疑うわけではないけれど、すぐに説明できないことの理由がわからなくてつい眉を顰めてしまう。
それをちらりと横目で確認した彼が、苦笑交じりに一言加える。


「信用を取り戻すのはまず、疑いを払拭するのが一番なんだろうけどね……言葉だけで説明しても信じてもらえそうにないくらいに僕の信用は失墜してるし。証明出来るまでは、ちょっと気長にいくよ」


何か考えているのだろうか?
もう三年も経ってることを、目に見える証拠で突き出せなんて私もさすがに言わないつもりだったけれど。


どうしてそこまで、私を取り戻そうとしてくれるんだろう。
聞きたいことは山ほどあるけど、まずはそれを聞きたくなった。


運転する横顔をじっと見つめていれば、やっぱりあの頃より少し痩せたせいか穏やかそうな雰囲気の中にも少し、影の部分も感じ取れる。
そこが以前と少し違って、以前よりも艶っぽく、見えていたり……どのみち変わらないのは別に私に拘らなくてもいくらでも女性が寄って来る風貌であるということだ。


「どうして、そこまでしようとしてくれるんですか」

「ん?」

「もう、めんどくさくならないですか? 私じゃなくてもいいじゃないですか」


質問しているのは私の方だ。
だけどわからないといった顔をしたのは彼も同じだった。


「好きな人を取り戻したいと思うのは、普通のことじゃない?」


……好きな人


夜の車内は暗くてきっと、私の顔色までは知られないだろう。
夜で良かった、と思う。だけど声が上擦ってどもってしまったのはどうにもならなかった。

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