極上スイートオフィス 御曹司の独占愛
「僕も、着いたら部下のふたりがこんなところに潜んでいるものだから驚いたんだけどね」
怖いくらいの笑顔と嘘で、朝比奈さんは淡々と話しを詰めていく。
私たちと視線が合った彼女は、気の毒なほどに顔を真っ赤にして目を潤ませていた。
そして私と伊崎を交互に見ると、更に赤くなって唇を戦慄かせる。
「どうしてここにっ……」
「す、すみません」
きつく睨まれて、とっさに謝罪の言葉が出てしまったのは、怖いよりも可哀想になってしまったからだ。
だって、これ、いくらなんでも朝比奈さん、性格悪い。
わざと彼女のプライドを傷つけている。
けれど、彼の言葉は止まらない。
「どうしても何も、僕が話したのは君にだけだから」
「違います、私は、だって……」
焦った声で彼女は否定するけれど、それは途中で力なく掻き消える。
……私は全部聞かされてましたけどね。
と、これを言ってしまえば、朝比奈さんの算段を邪魔してしまうのだろうからぐっと飲み込んだが、あまりにもしれっと嘘を吐いているので呆気に取られてしまった。
倉野さんにしてみれば、私たちがどうしてここにいるのかわけがわからないだろう。
伊崎には待ち合わせを伝えたけれど、断られ三年前と同じようにはいかなかった、とそう言いたいのだろうけれど、言えばすべて説明しなければならなくなる。
それが倉野さんの口を閉ざさせた。
「プライベートだと勘違いしたから、ってことかな。いくらなんでも仕事の話なら専務の秘書を務めている人が洩らすとは思えない」
「そ……のとおりです。申し訳ありません」
「いえ。僕も勘違いさせるような物言いをして申し訳なかった」
朝比奈さんの言葉が少し柔らかくなる。
倉野さんの背中を見ていて、彼女がほっと力を抜いて肩が下がったのが見て取れた。
なんだか私の方までほっとしてしまったのだけど。
「だけど、それじゃあ三年前のことはどう説明するのかな」
ひとつひとつ、彼女の言い訳を先回りして潰していく話し方に、本気で怖いと思った。