極上スイートオフィス 御曹司の独占愛
「だから、仕事に没頭して」


離れた月日を思い出して、涙が溢れて止まらなくなった。
ひく、としゃくりあげれば、胸元の指輪も揺れる。


「あなたからもらったエリアを、ちゃんと守って、大事に育てて、それだけを考えて」


拭っても拭っても、涙が止まらなくて、朝比奈さんの顔が見えない。


「だけどやっぱり、あなたのようにはいかなくて、うまくいかなくて、でも」


酷い泣き顔だろう。
両手で顔を隠したかったのに、片手はまだ彼に掴まっていて出来なかった。


もう片方の手の甲を瞼にあてても、涙を堰き止めることはできなかった。


「いつか、戻ってきたあなたに、頑張ったねって、褒めてもらいたくて」


恋人としてはいられなくても、せめて。


そうしたら、またあの優しい笑顔を見れるだろうか、それだけを、考えていた。


離れようとしても忘れようとしても、ずっと心の中が空っぽにすらならない。


いっそ空虚になれたなら、楽だったかもしれないと何度も思った。


だけど寝ても覚めても、あなたがいる。


「忘れられませんでした……っ」


仕事も恋も、すべてにあなたの思い出がある。
忘れられるわけがなかったのだ。


嗚咽が苦しくて、もうそれ以上言葉にはならなかった。


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