極上スイートオフィス 御曹司の独占愛

会社のビルから一歩出て、すぐ目の前の通りには三軒カフェがある。
一番近いところでいいか、と歩き始めてすぐだった。


「吉住さん」


後ろから声をかけられ、誰の声かも判断しないうちから条件反射で振り向いた。
一瞬驚きのあまり声が出なくて返事が遅れ、その間に小さな会釈とともに彼女の声が続く。


「お疲れ様です」

「えっ……あ、お疲れ様です、倉野さん」


戸惑い気味に、こちらも会釈を返す。
あの日以降、ちらっと遠目で見かけたことはあっても、彼女と言葉を交わすのは初めてだった。


「突然呼び止めてごめんなさい。良かったら少し、お話ができないかと思って」


そう言う彼女は、微笑みこそなく無表情ではあるけれど、敵意なども感じられず穏やかなものに見えた。