極上スイートオフィス 御曹司の独占愛
「コーヒー淹れようか」

「あ。すみません、私が」


流し台に向かっていく朝比奈さんの後に続くと、本当に綺麗なものだった。
IHのコンロにホーローの小さなやかんがひとつと、食器棚にもカップとお皿が二つ三つ並んでいるだけ。


対面キッチンの背後にある作業台には、随分と本格的なコーヒーメーカーがドンっと鎮座していた。


「ほんっとに、物がないですね」

「大阪を出る時に、ほとんど処分したり譲ったりしてきたから。食器類はひとり分あれば十分だったし」

「食事とか、ちゃんと食べてるんですか」

「食べてるよ。それなりに」


怪しい。
私も忙しい時期なんかはどうしても外食が続いたりするけれど、この台所は恐らく、お湯を沸かした程度にしか使われていない、とそうわかる綺麗さだ。
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