【短編】夕暮れモーメント





その友達から、知り合いの経営するレストランで演奏してみないかという誘いを受けた。





「だけどなあ、だけど、」





勝三さんは病気で手が麻痺したことから、サックスを辞めてしまったそうなのだ。






レストランで演奏し始めてから、わずか三ヶ月のことだったらしい。




いつしか見た、勝三さんのデータには、勝三さんが病気になったということが記されていた。

リハビリのおかげで、手の麻痺はだいぶ緩和したらしい。





「でも、サックスをもう一度始めようという気にはなれなくてな」



そう言いながら、車椅子の手すりをリズミカルに指で叩く、勝三さん。


「どうしてですか?」



勝三さんは指を小刻みに動かしたまま、その質問には答えようとはしない。




閉めたはずのドアから、拍手の音が聞こえてきた。


ふと時計を見ると、針はコンサートの終了時刻を指していた。



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