【短編】夕暮れモーメント
「合点だ。なら、他の人も、みんなで、コンサートで演奏するのはどうだ。きっと盛り上がるぞ」
勝三さんは生き生きと話し始めた。
「だったら、私、みんなに声かけてみます。ずっと楽器やってなかったような方たちにも」
「ただ、あんまり上手すぎる人はダメだぞ」
「どうしてですか?」
「わしの腕が、かすんで見えるからだ」
ハッハッハッ、と勝三さんの暖かい笑い声が響く。
私もつられて、笑ってしまう。
「勝三さんに負けないくらい、いっぱい練習してきますね」
「これじゃなかなか、あの世にも行けないなあ」
12月の早すぎる夕日が、勝三さんの白髪をオレンジ色に染めていた。
窓からの光が、サンタ姿の私と笑顔の勝三さんの2つの影を、くっきりと映し出していた。
fin.
