【短編】夕暮れモーメント
「私も、もう全然鈍ってると思うんですけど、そういうことじゃないんです。あれで終わりにしたくないんです。たった1つのきっかけなんかで、好きだったサックスを終わらせたくないんです」
「…そうか」
勝三さんはゆっくりと車輪を動かし、窓の方に進んでいった。
窓は外の夕暮れの空を、ましかくに切り取っていた。
「そこまで言うなら、乗っかりたくないこともない」
勝三さんも、私も窓越しの空を見ていた。
「わしは、サックスが嫌いだ」
「だけどな、サックスを演奏するのは大好きだ」
「…私もです」
「また演奏できたら、聴くのも好きになれるかもしれないな」
「…私も、そう思います」
「だけどなあ、、、、、下手だろうなあ!!人に恥は晒したくないなあ」
「だから、練習しましょう。来年のクリスマスまで。それで、演奏しましょう。ここで、今日みたいに、コンサートを開いて」