この世界は7で終わる
_388年12月24日
結婚の約束をした日。そして最後の日だ。
休憩もなく歩き続けた。すぐそばにあると思っていた海は思ったよりも遠くにあった。風に乗って香りが先んじていただけ。心底、この世界は私達に厳しいと感じた。
丸一日歩き続けたから足が痛い。さすがに疲れたと言ってしまいそう。
でもーーー・・これは旅の果てに相応しい。
「海だ」
浜辺と呼ばれる砂の大地よりも数十メートル高い位置にある高台。下は緑が生い茂っていて、ここが海と陸の境界線なのだろうかと思う。
真っ直ぐだと思っていた水平線は緩くカーブを描いていて。自分がまだ地球にいるのだと実感した。
「ルカ、着いたよ」
「……、」
間に合った。まだここにいる。
ルカ一人分にしては大きかったリアカーが、今にも潰れそうに撓っていた。その器から溢れているのは人ではなくーー・・樹木のうねり。
「ルカ、そこから出よう」
「…もう、動けね、ぇ」
「口が動くならまだ大丈夫」
私はルカの身体に腕を通す。その感触に一瞬躊躇った。
「ア、トリ、寒い」
「大丈夫。私が抱きしめててあげる」
それはもう温もりとは言えない何かだった。ひんやりとした肌は、もう人の物ではない。必死に持ち上げようとした身体は人の重さではない。
私はルカを引きずるように地面に降ろして、その傍らに膝をつく。顔と奇跡的に右手の指はまだ見えていた。
安堵した。まだ、終わってない。