神様の隣で、君が笑った。
 


* * *


「……また寝てる」


目的地であった第三音楽室に入ると、そこには以前と同じように、陸斗くんがピアノ椅子の上に寝転んでいた。

背が高いせいで腰から下は落ちているし、そんな体制で寝て疲れないんだろうかと疑問に思う。

私は古びたデスクの上にプリントを置くと、足音を忍ばせながら彼のそばへと近寄った。

起こしたら、また怒られるかもしれないし。

細心の注意を払いながら近くに立って、陸斗くんを眺めてみた。

片腕を顔の上に乗せ、眠っている陸斗くん。

以前も思ったけれど近くで見れば見るほど、綺麗な肌だ。

長い睫毛は腕に隠れて見えないけれど、嫌味なくらいに脚も長い。

……わかってはいたけど、世の中って不平等だよね。

こんなに綺麗な男の子がいたら、彼に恋する女の子はお肌の手入れも大変だ。


「……っ!」


その時、ビクリと身体を揺らした彼が、唐突に腕を上げた。

突然のことに驚き固まると、目を見開いた陸斗くんと目があって、背中を冷汗が伝う。

 
< 160 / 319 >

この作品をシェア

pagetop