神様の隣で、君が笑った。
 




「《うん、わかった。じゃあ、今日は先に帰るね》──送信、っと」


期末テストも目前に控えた、ある日の放課後。

私は商業科の教室で一人、携帯電話とにらめっこをしていた。

放課後の学校は、昼間と違って賑やかだ。

堅苦しい授業から解放されて、心が少し軽くなる。

……今日は忘れ物、ひとつで済んだなぁ。

ぼんやりとそんなことを考えながら、私は一人、宙を見上げた。

すると、しばらくもしないうちに手の中の携帯電話が震えて、朝陽の返事が返ってきたことを知らせてくれる。


「《気を付けて帰れよ。家に着いたら必ず連絡して》……って。私、一応、もう高校生なんだけど」


過保護な言葉にクスクス笑うと、《わかった》とだけ返事をした。

そうして、鞄を手に持ち自分の席から立ち上がる。

携帯電話をスカートのポケットの中へと入れて、通い慣れた教室から出れば、初夏の風が頬を撫でた。

 
< 68 / 319 >

この作品をシェア

pagetop