腹黒王太子の華麗なる策略
やらなければならないことが山ほどある。

アンの母親に近づいて脈を確認するが、やはり死んでいた。

その遺体に手をかざしても、生き返らない。

『魔力も万能ではないか』

苦い思いが胸に広がる。

せめて綺麗な姿に戻してあげよう。

アンの母親の顔を元に戻し、遺体を綺麗にしてやると、彼女の手を取りそっと口付けた。

『おば上、アンは俺が守ります。だから、安心して眠ってください』

アンの母親は俺にとって母同然だった。

実の娘のアンと同じように俺のことも可愛がってくれて、俺も彼女のことを慕っていた。

彼女を殺したフィオナへの憎悪で頭がおかしくなりそうだ。

だが、アンのことが気がかりで、理性で怒りを抑える。

気を失ったアンの額に手を当て、彼女の母親の死についての記憶を消した。

『アン……すまない』
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