腹黒王太子の華麗なる策略
彼女の母親は黒髪に黒い瞳だったが、父親はその王の血を引いているんじゃないだろうか?

それに、彼女と一緒にいる猫も同じ紫の目をしていて、彼女の出自に関係している気がする。

だが、アンの父親が何者であっても、彼女は自分の命よりも大切な存在で、俺が愛するただひとりの女性だ。

アンが側にいてくれれば、他の女なんていらない。

だから、結婚の話はことごとく断っている。

「それにしても、キスしただけであの反応。これから毎日して慣れさせるしかないか」

アンの狼狽えた様子を思い出し、フッと笑う。

だが、まだキスから先に進むつもりはない。

俺は、厄介な問題を抱えている。

それが解決するまでは、彼女を手に入れられない。

右手の人差し指の黒い爪をじっと見る。

すると、ドアが開く音がして、ラルフがひどく取り乱した様子で現れた。

「ク、クリス様、……た、大変です!」

「ラルフ、落ち着けよ」
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